子ども(中学生以下)のピロリ菌感染について
もし自分の子どもに
ピロリ菌がいたら
ピロリ菌はいつどのように感染するの?
ピロリ菌の主な感染経路は、口から口の経口感染と言われています。
感染時期は5歳以下の幼少期に、主にピロリ菌感染者である母親や家族等からの口から口による経口感染によって感染して、この時期に感染すると、除菌しない限り生涯にわたり持続感染すると言われています。
なぜ5歳未満の小児期に感染するの?
大人になってからは感染しないの?
ピロリ菌は実は酸にとても弱く、胃酸の中では生きられませんが、幼少期はまだ胃酸分泌が不十分で、免疫力も低いため、この時期にピロリ菌に感染すると、胃の粘液層に潜り込んで一生涯住み続けます。
逆に大人になってからは、仮にピロリ菌が口から侵入しても胃酸が十分に分泌されているため、すぐに死んでしまい、持続感染はほとんどしません。
そのため、中学生以上で一度除菌すると再感染はほとんどありません(1%以下)。
よって、できるだけ早い時期にピロリ菌感染の有無を確認して、もしピロリ菌がいれば
できるだけ早い時期(20代まで)に除菌すれば、将来胃がんになるリスクはほとんどなくなるのです。
子どものピロリ菌感染率はどれくらい?
中学生のピロリ菌感染率は5%前後と言われています。
5%は少ないようですが、20人に1人がピロリ菌に感染しているという事です。
子どものピロリ菌感染の検査はいつ頃すればいいの?
中学生のうちに、検尿か検便でピロリ菌検査を行い(保険外にはなりますが安価な検査です)、万一ピロリ菌陽性の結果がでたら、これも自費にはなりますが、尿素呼気試験を行い
それで陽性の結果がでれば、その子はピロリ菌に感染していると思っていいでしょう。
子どもがピロリ菌に感染していた場合、いつ頃除菌をすればいいの?
子どものピロリ菌の除菌時期は、日本ヘリコバクターピロリ学会でも様々な意見がありますが、一般的に中学生(特に2年生頃)のうちに除菌することを勧めています。
なぜこの時期かというと、
①まず感染早期のできるだけ若いうちに除菌することで、将来の胃がんを確実に予防できること
(感染症が原因のがんは、感染予防・感染の早期発見が原則です)
②除菌薬の副作用の発現率が成人と変わらないこと
③中学生以降の再感染の可能性がほとんどないこと
以上3つがその理由です。
除菌率は1次除菌2次除菌をあわせるとほぼ99%以上と良好です。
函館市では現在、中学2年生に対して尿中ピロリ抗体を測定し、陽性者には2次試験として尿素呼気試験を実施しています。そして陽性者には積極的に除菌治療を行っています。
そんなに慌てなくても、成人になってから除菌してもいいのでは?
という疑問もあるでしょう。
確かに胃がんの97%が50歳以降に発症します。しかし、胃がんの中にはピロリ菌感染後に長い年月を経てなる萎縮性胃炎を介さずに、いきなり未分化型胃がんになる場合があるのです。この未分化型胃がんは別名“スキルス胃がん”とも言われ、慢性胃炎から萎縮性胃炎の長期経過をたどらず、慢性胃炎からいきなり胃がんになるため、進行も早く予後の悪い恐ろしいがんなのです。ですから未分化胃がんは若い人に多くみられ、むしろ高齢になってからかかる通常の分化型胃がんよりも予後が悪く、若い人の命を奪ってしまう恐れがあるのです。
以上より、できるだけ早い時期にピロリ菌感染の診断と治療をするべきだという理由がわかって頂けたと思います。
ピロリ菌の世界的権威である浅香正博先生によると、20~30才代までに除菌すれば、男女ともにほぼ100%胃がんの発症を抑えることができると言われています
子どもには内視鏡検査はいらないの?
中学生でピロリ菌感染が分かった場合は、自費にはなりますが、まず除菌治療を優先として、必ずしも内視鏡検査を受けずに除菌しても構わないでしょう。
除菌後は、必ず再度尿素呼気試験によって、“除菌判定”を受けて下さい。
そして、除菌後は成人になる前に一度内視鏡検査を受けるべきでしょう。
よって母親や父親・祖父母等の誰かが
①ピロリ菌に感染していると言われた
②ピロリ菌除菌の既往がある
③胃がん(胃がんの99%はピロリ菌が原因のため)であるor胃がんで亡くなった
①~③の場合はその子どもは、家族にピロリ菌感染者がいない子どもに比べて、ピロリ菌感染の可能性が高いため、中学生の時に、尿または糞便などによるピロリ菌感染の検査を受けるべきだと思います。
お子様のピロリ菌について、疑問や不安などのある方は、どうぞお気軽に当クリニックにいらし下さい。